「思い出」は、スマホのデータフォルダの中に入っているのが当然の時代に、「卒業アルバム」というのは古色蒼然と感じられるでしょうか？

　私自身は、フィルムカメラの時代の大学生でしたが、それでも、卒業直後の時点で、率直にいって卒業アルバムというものに、それほど価値があるという感覚は持てませんでした。自分の写真が載っているのはほんの数ページ。残りページには、まだ記憶に新しい在学中の大学全般のさまざまなできごとや、膨大な人数の顔見知りでもない同期生たちの写真。過去数年間に自分が体験したことの写真や動画が、日々手元で使っている道具の中にたくさん収まっているいま、こんな冊子に、所持している意味を感じにくいというのが実際のところだと思います。

　しかし、数十年という時間が経過したとき、その意味は必ず変わります。皆さんの手元には、もういまのようなスマホはなくなっているでしょう。どこかのサーバやメモリカードに記録されているはずの思い出の写真や動画を読み出すことが難しくなっている可能性は小さくありません。そして、見ず知らずの学友を含む2020年頃の大学で起こった出来事や、その時代の大学生の写真が掲載されている卒業アルバムは、手に取ればすぐに目にすることができる、タイムトリップの媒体になってくれます。社会人になってから知り合った同窓生の学生時代の姿が、そこに発見できたりするかも知れません。

　未来の自分に贈るタイムカプセルとして、また、皆さんがこれからも変わることのない法政ファミリーの一員であることを再確認させてくれる手がかりとして、卒業アルバムを手元に置いておくことは悪くない選択肢のひとつだと思います。